相続能力 どんな人でも相続人となれるか

民法では「相続能力」について、原則として外国人も含めたすべての自然人が有するものとしています。
また相続開始時に胎児であった者も、相続能力に関しては「既に生まれたものとみなす」と認めています。これは何を意味するかというと、例えばまだ子供のいない夫婦の旦那様が亡くなってしまった場合、相続配分は配偶者である奥様(3分の2)と相続順位第二位のご両親(3分の1)となりますが、もし旦那様が亡くなったときに奥様が懐胎中であったのなら(実際に生まれてくることが条件となりますが)、胎児に相続能力を認め、奥様(2分の1)と相続順位一位の胎児(2分の1)が相続人となるわけです。

 

では逆に、相続能力が認められない者にはどのような種類があるでしょうか。

 

本来相続人になるべき者であっても、相続に関して不正な利益を得ようとして不法な行為をしたり、重大な犯罪を犯したりした者や、被相続人に対して重大な侮辱・暴行を加えるなどした者にすんなりと相続をさせることは、法感情として納得できませんし、被相続人の意思に反することになります。そこで、民法は相続欠格・廃除という2つの制度を設けて、このようなものを相続人から除外しています。

相続欠格

相続欠格とは、相続人において、民法で列挙する一定の非行がある場合に、何らの手続きを踏むことなく、自動的に相続権を失わせるものです。
欠格事由は大きく分けると次の2つです。

 

  • 故意に被相続人、または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処された者。
  • 被相続人の遺言の妨害(偽造・変造・破棄・隠匿等)行為をした者。

相続廃除

相続廃除とは、被相続人が特定の相続人に相続させることがどうしても許せないと考える事情がある場合、家庭裁判所に請求して、審判または調停によってその相続人の相続権を失わせる制度です。また相続廃除は遺言によっても請求できます

 

廃除できる相続人の範囲は「遺留分を有する推定相続人」です。遺留分を有する推定相続人とは「配偶者」「子または孫・ひ孫など」「両親や祖父・祖母」が該当します。それ以外の兄弟姉妹等は廃除請求をすることができません。

 

廃除の理由は次の2つです。

 

  • 被相続人に対する虐待・侮辱
  • 推定相続人の著しい非行

相続放棄との違い

法定相続分の説明でも少し触れましたが、「相続放棄」と「相続欠格・廃除」には代襲相続に関して大きな違いがあります。

 

  • 相続放棄:代襲相続なし
  • 相続欠格・廃除:代襲相続あり

 

相続放棄は相続人自らの意思で「相続はしません」と表示しているのであり、最初から相続人ではなかったとみなされます。
それに対し相続欠格・廃除は相続人自らの意思とは関係なく推定相続人から除外される制度であり、その者に欠格事由や廃除事由があったにせよ、その者の子や孫(直系卑属)には何の落ち度もないことから、直系卑属の代襲相続を認めているのです。