風俗営業を営むうえで必要となる要件

スナックやキャバクラを営む場合、まず前提として飲食店営業許可を取得していなければなりません。飲食店営業許可を取得したうえで、各風俗営業(スナックやキャバクラ等)の許可申請をプラスして取得するという形です。飲食店営業許可申請についてはこちらで説明します。

 

飲食店営業許可を取得しましたら、いよいよ風俗営業許可申請です。
風俗営業を営むには大きく分けて「場所的要件」「人的要件」「構造的要件」の3つの要件があり、これらを全て満たさなければ許可がおりることはありません
以下ではそれぞれの要件について説明します。

場所的要件

まず第一に、風俗営業店が営業可能の場所であるかについて2つの要件を満たしていなければなりません。

 

まず一つ目の要件について、これから風俗営業店を行いたい場所がどのような用途地域に分類されているかを調べます。こちらのサイトで確認してください。

 

用途地域

第一種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 近隣商業地域 商業地域 準工業地域 工業地域 工業専用地域 無指定地域
1号 キャバクラ・スナック・料理店等 × × × × × × ×
4号 マージャン店 × × × × ×
4号 パチンコ店 × × × × ×
5号 ゲームセンター等 × × × × ×
深夜酒類提供飲食店 × × × × × × × × × × ×

商業地域または近隣商業地域であれば、上に挙げた全ての風俗営業店が一つ目の場所的要件を満たすことになります。
また無指定地域に関しては、保全対象施設(後述)が無ければ設置可能です。

 

ちなみに上に挙げていない特定遊興飲食店営業(クラブやディスコ)は、沖縄県内だと、那覇市松山の一部地域と、沖縄市上地(中の町)の一部地域しか設置が認められていません。

 

次に2つ目の場所的要件である保全対象施設について説明します。
よくスナックやキャバクラを開店しようとするとき、
「その場所は病院が近くにあるから、お店出せないよ」
「近くに学校があるから許可取れないよ」
という声を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
風営法では青少年の健全な育成を妨げる行為や、清閑な生活を送る権利を侵害する行為を厳しく規制しています。つまり病院や小学校の近隣にスナックやキャバクラを営業されては困るというわけです。
この例で言うと病院や小学校が「保全対象施設」に該当し、風俗営業店を開店する場合、これらの保全対象施設から一定の距離を置くように風営法でルールが設定してあります。
それでは保全対象施設にはどんなものがあるのか見ていきましょう。

 

保全対象施設

保全対象施設 具体的な施設
学校 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、盲学校、ろう学校、養護学校
図書館 地方公共団体、日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人が設置するもの
児童福祉施設 助産施設、乳児院、認可保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設(児童遊園や児童館)、児童養護施設、知的障害施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害者施設、情緒障害児短期治療施設、児童支援施設、児童家庭支援センター、母子生活支援施設
病院 患者20人以上の入院施設を有するもの
診療所 患者19人以下の入院施設を有するもの

それではこれらの保全対象施設が、風俗営業店からどのくらい離れていればいいのかということですが、

 

商業地域の場合

営業所からの半径 保全対象施設
50メートル

学校
(大学は含まない)

図書館

児童福祉施設
(助産施設を除く)

20メートル 大学

病院
(病院にあたる助施設を含む)

診療所
(8名以上の入院施設)

10メートル

助産所にあたる
助産施設

診療所
(7名以下の入院施設)

 

近隣商業地域の場合

営業所からの半径 保全対象施設
100メートル

学校
(大学は含まない)

図書館

児童福祉施設
(助産施設を除く)

50メートル 大学

病院
(病院にあたる助施設を含む)

診療所
(8名以上の入院施設)

20メートル

助産所にあたる
助産施設

診療所
(7名以下の入院施設)

 

その他の地域

営業所からの半径 保全対象施設
100メートル

学校
(大学は含まない)

図書館

児童福祉施設
(助産施設を除く)

大学

病院
(病院にあたる助施設を含む)

診療所
(8名以上の入院施設)

 

これから営業を行おうとする場所が、例えば既に隣にスナックやキャバクラがあるからといって、安易に考えてろくに調べずに申請すると痛い目にあいます。その隣のお店が出店した後に、上記の保護施設が距離制限に引っかかる状態でできた場合は、もうその場所で営業許可を取ることができません。隣のお店はいわゆる既得権営業をしているのであり、既得権営業をしているのは外から見ては分からないので、やはり必ず自分の足で近隣を回って確かめる必要があるのです。

 

人的要件

場所的要件をクリアできれば次に人的要件を満たす必要があります。
風俗営業は誰でもできる訳ではありません。警察の許可のもと特別に認められる営業であるため、それなりの制約があります。以下の項目にあてはまるものがないか、必ず確認しておきましょう。

 

人的要件 欠格事項

  1. 成年被後見人、成年被保佐人、破産者(免責を受けていない者)
  2. 1年以上の懲役、金庫の刑に処せられ、刑の執行をうける事がなくなってから5年が経過していない者
  3. 5年以内に刑法、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、売春防止法、職業安定法、入国管理法、労働基準法、児童福祉法児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰および児童の保護等に関する法律、等で罰金刑を受けた者
  4. 組織暴力団関係者
  5. アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚せい剤中毒者
  6. 営業取り消しの処分を受けてから5年を経過していない者、風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日および場所が公示された日から当該処分をする日または当該処分をしないことを決定する日までの間に許可証の返納をした者
  7. 未成年者(ただし相続の場合は例外あり)

 

以上の項目に一つでも当てはまれば管理者にも申請者にもなれません。

 

※重要
個人ではなく法人(会社)として申請する場合は、業務を執り行う役員、取締約、相談役など、重要なポストに係る者の中に一人でも上記欠格者に当てはまれば不許可になります。

構造的要件

場所的要件と人的要件をクリアすれば、最後に構造的要件を満たす必要があります。

 

1号営業(キャバクラ・スナックなど)の構造的要件

  1. 客に接待をし、飲食をさせる営業である
  2. 客室の面積について、客室が二室以上の場合は一室の客室面積は16.5u以上とする。ただし一室の場合はこの限りでない※1
  3. 客室の内部が当該営業所の外部から見通すことができないこと
  4. 客室の内部に見通しを妨げる設備(1m以上の設備や仕切り等)を設置しないこと
  5. 善良な風俗または清浄な風俗環境を害する恐れのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと※2
  6. テーブル上、椅子の座面上の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造または設備を有すること※3
  7. スライダックス(調光設備)が設置されていないこと※4
  8. 騒音、振動を条例で定められた数値以下に維持するため必要な設備、構造であること
  • ※1 店内が一室であればどんなに小さくても構わないのですが、二室以上の場合は一室の広さの最低基準を設けています。
  • ※2 ヌード写真・ポスター等の掲示物が該当します。
  • ※3 5ルクスとは一般的に「新聞が読める明るさ」とされていますが、できれば照度計で実際にチェックしておきましょう。
  • ※4 LED電球などの明るさの調整ができるツマミが付いている調光設備のことです。今の時代付いていて当然のシステムと思われますが、残念ながら風営法上はまだ認められていませんので、もしこのような設備が付いていれば電気屋さんに頼んで交換してもらいましょう。